サステナブルWebデザインとは?持続可能なサイト制作の方法と成功事例まとめ

突然ですが、「サステナブルWebデザイン」という言葉を聞いたことはありますか?
お恥ずかしながら私はつい最近知りました。。。
初めて聞いた時には、「SDGs関連の情報を取り扱うサイトやSDGs関連事業のサイトのデザインのことかな?」と思ったのですが、調べてみるとそうではない様子。
どうやらWebデザインの世界でも、環境への配慮が重要視される時代が到来したようです。
本記事では、サステナブルWebデザインの基本概念から実践的な方法、さらに参考となる成功事例についても調査してみました。
サステナブルWebデザインとは?
サステナブルWebデザインとは、環境に優しい方法でWebサイトを設計・運営することを指します。サイト運営によるエネルギー消費を削減し、カーボンフットプリントを最小限に抑えることを目的としています。
- エネルギー効率の最適化:画像や動画の圧縮、軽量化されたコードの使用
- ユーザー体験を向上:シンプルで直感的なデザイン
- 長寿命デザイン:頻繁なリニューアルを不要にする構成
サステナブルWebデザインの必要性
インターネットの利用が増える中、Webサイトが消費するエネルギーも増加の一途をたどっています。2025年現在、インターネットは世界の総エネルギー消費量の10%近くを占めると推定され、航空業界の消費量と同程度です。このような背景から、環境負荷を軽減する「サステナブルWebデザイン」の必要性がますます高まっています。
※参考:Lean ICT Report
環境負荷とWebサイト
- データセンターのエネルギー消費
データセンターはWebサイト運営の中核を担っており、大量の電力を消費します。これに伴う二酸化炭素排出量を削減することが、Web業界全体の課題となっています。 - トラフィックの増加
動画や高解像度の画像が増えることで、インターネットトラフィックも急増。これにより、Webサイトが環境に与える影響はさらに拡大しています。
サステナブルWebデザインがもたらす価値
- 環境保護
サステナブルなアプローチを採用することで、温室効果ガス排出量の削減が可能となります。 - ブランドイメージの向上
環境配慮型の企業としての評価が高まり、顧客の信頼を得ることができます。 - 運営コストの削減
軽量化やエネルギー効率化を図ることで、運用費用を抑えられます。
サステナブルWebデザインは、単なるトレンドではなく、未来のWeb制作におけるスタンダードとなるべき取り組みです。企業や個人がこの考え方を取り入れることで、より持続可能な社会の実現に貢献できます。
サステナブルWebデザインを実現する方法
1. 軽量なコードの使用
HTML、CSS、JavaScriptを最適化して無駄を省き、ページの読み込み時間を短縮します。GoogleのPageSpeed InsightsやGoogle Lighthouseを活用して改善点を特定しましょう。
2. グリーンホスティングの選択
再生可能エネルギーを利用するホスティングサービスを選びます。GreenGeeksやエコロジカルウェブホスティングなどが代表的です。GreenGeeksでは、そのホスティングサービスが100%再生可能エネルギーを利用していることが報告されています。
▼ 日本国内のサーバーだと、「さくらインターネット」もおすすめです。
さくらインターネット(データセンター)
日本国内のデータセンターサービスを提供する「さくらインターネット」は、エネルギー効率の高いデータセンター運用に力を入れており、2023年には、石狩データセンターを水力発電を中心とした再生可能エネルギー電源100%に切り替えることで、CO2排出量ゼロを実現しています。
▼ 公式サイトはこちら

3. メディアの最適化
画像や動画は軽量化し、必要最低限の解像度で提供します。WebP形式の画像や動画のストリーミング形式を検討しましょう。
4. ダークモードの活用
画面の輝度を下げることで、デバイスの消費電力を削減できます。
5. サーバーリクエストの削減
キャッシュの有効活用やリソースの統合で、サーバーへのリクエスト回数を減らします。
サステナビリティ診断サービス
Webサイトを改善するためには、現状を把握する必要があります。
そんな時には、WebサイトのCO2排出量を簡単に診断できる便利なサービスがございます!
Website Carbon Calculator
デジタルサステナビリティの先駆者と言われているロンドンの「Wholegrain Digital」が運営するサービスでは、Webサイトの1ページビューあたりのCO2排出量を海外らしいユニークな表現で診断してくれます。
例えば、CO2排出量が0.741gの場合、1ヶ月だと「1本の木が1年間に吸収する炭素の量を排出します。」といった例もいくつか紹介してくれるので面白いです。
※ちなみに運営元のサイトを診断したところ、最高ランクのA+でした。さすがですね。
▼ 公式サイトはこちら

Ecograder
Mightybytes社が運営する「Ecograder」では、既存サイトのエネルギー効率を診断することができます。
CO2排出量の概算に加え、データ容量、UXデザイン、グリーンホスティングの3項目をカテゴリごとにスコア化してくれます。特にWordPressを利用したサイトの場合、画像の最適化やキャッシュ設定など、改善点が具体的に提示されるので便利です。
▼ 公式サイトはこちら
サステナブルWebデザインの参考事例
サステナブルWebデザインに取り組み、成功している参考事例を調べてみました。
株式会社メンバーズ
2021年から「サステナブルWebデザイン」の調査・研究・検証を重ねており、自社サイトでも実践しています。2022年には、年末のご挨拶を自社サイトで行うことで、紙の年賀状を送付した場合と比較して約7割のCO2排出量の削減を実現。その後もAI生成の活用やノーコードWeb制作「Studio」の導入など、さらなるCO2排出量削減に向けて積極的に取り組んでいます。
また、ノウハウの詰まった「サステナブルWebデザイン」のガイドラインとチェックリストを無料公開してくださっているため、とても参考になります。

パシフィコ横浜
日本最大級のコンベンション施設を運営している「パシフィコ横浜」は、2023年にサステナブルWebデザインを取り入れた公式サイトのフルリニューアルを行いました。
ノーコードWeb制作ツール「STUDIO(スタジオ)」を導入し、「TOPページのスマート化」「UIデザインの強化」「サイト全体のページ数削減」などの改善を行うことで、年間のCO2排出量をリニューアル前と比べて約4割も削減することに成功しています。削減できた年間CO2排出量は6.8tにもおよび、これは杉の木772本が1年間に吸収する量に相当するとのこと。

GMOペイメントゲートウェイ株式会社
GMOインターネットグループが運営する決済サービス企業「GMOペイメントゲートウェイ株式会社」は、2024年7月29日に行った自社サイトのリニューアルにて「サステナブルWebデザイン」を採用しました。
すでに2023年に温室効果ガス排出量ゼロを達成し、Webサーバーを再生可能エネルギーで運用しており、リニューアルでは、サイト軽量化により訪問者のCPU負荷や電力消費を削減し、持続可能なWeb環境を提供しています。
Wholegrain Digital
先ほどご紹介した診断サービス「Website Carbon Calculator」を開発・運営しているロンドンの企業「Wholegrain Digital」は、自社を「デジタル サステナビリティの世界的リーダーであり、この分野の先駆者である」と語っています。持続可能なWebデザインの制作に長けており、さまざまなサイトの改善に携わっています。
「Aliter Networks」の改善では、「ページビューあたりのCO2排出量を95.22%削減」「読み込み時間は約80%短縮」など、以前のサイトと比べて二酸化炭素排出量を大幅に削減することに成功しています。

Unilever(ユニリーバ)
2023年12月13日、世界最大級の消費財メーカー「ユニリーバ」は、自社サイトのCO2排出量軽減方法を公開しました。データの軽量化や効率的なサーバー運用を実施しており、その結果、トラフィックあたりの二酸化炭素排出量を削減し、可能な限り持続可能でアクセスしやすいWebサイトを実現しています。
サステナブルWebデザインのメリット
- 環境への配慮:企業イメージの向上
- コスト削減:ホスティング費用やエネルギーコストの削減
- SEO効果:ページ速度の向上により検索エンジンでの評価が向上
サステナブルWebデザインの課題
- 初期コスト:最適化や軽量化にかかる費用
- 専門知識の必要性:エネルギー効率を意識した設計が求められる
よくある質問
まとめ
サステナブルWebデザインは、環境への配慮だけでなく、コスト削減やSEO効果の向上にもつながります。これからのWeb制作において不可欠な考え方となるでしょう。あなたのサイトも、環境に優しいデザインを取り入れてみませんか?